ふうか日記
 

犯人捕カク大作戦(2)  11.16

翌日の放課後から実行開始。
「ふうちゃん、これポケットに持ってて、もしピンチになったら、犯人めがけて投げつける、いい?」
「…うん、でもこれなに?」
「コショウ」
「…コショウ」
「ふうか、もし急に襲われたら大声で叫べ、すぐオレがとんでってやるからさ!」
「ホー 頼もしいね」
「ハハ…」
(ホントにそんなことになったら…なんか急にコワくなってきた。またあの時みたいになったら…)
涼くんを見たら、なにか考えてるのか深刻そうなカオしてた… 結局、その日は何も起きなかった。
次の日も、次の日も… やっぱりこんなことしてもムダだったのか、犯人はもうあきらめたのか、みんなが当然そう感じ始めたその日、とうとう作戦を実行するときがきた! いつものように公園の前を通りかかったとき、突然おナカのあたりに腕がのびてきて、公園の中へ引きずり込まれてしまった。
声を出したいのに口をふさがれてしまって、それができない。
草むらの中に押し倒されてしまった。
「おとなしくしてくれたら何もしないよ」
(!お願い、みんなはやく気づいて!…アッそうだポケット…)
やっと手にふれた粉をそいつめがけて、思いっきり投げつけてやった。
「うわッ」
(やった…手がはなれた)
その時、べつの手が、あたしの手をひっぱった。
「はやく、こっちこっち」
「涼くん!」
「フー だいじょうぶ?ケガない?」
「うん、なんとかね」
「むこう、だいじょうぶかな」
そのとき、ふと、ヤな予感 そっと後ろを振り向いたら…
「キャー!!」
ドカッ
「うわ!なに…」
「ワ、ワニ… キャー」
「ハァ?」
それはすでに消えていた。
「なんなんだよ、いったい…」
(ハァ、ハァ、みた、ぜったいワニだよ、アレ)

「ふうちゃん、やったよ!コイツ、チョーヨワー」
「ザッとこんなもんね」
「みんなすごい それにしてもまるでドブにおっこったみたい」
「墨汁鉄砲だよ」…と、足もとをみると、「ギャー、ミミズ、ミミズー!」よけようとしたひょうしに、ソイツを思いきりふんずけたみたい。
「ヤッター、トドメはふうかでキマリ!」
「ふうちゃん、長いのキライだもんネー」
「でもこれキモイー」
「これはミミズじゃなくてイソメ」
「イソメって?」
「つりえさ、ってそれはそうとマリリン、どこいったんだろ」
「はっ マリリン? マリリンって?」
「ボクのペットのイグアナさ」
「イ、イグアナ!」
「ウッソー」
「オマエ、そんなの飼ってんの」
「はなしたらキケンじゃないの」
「べつに人間おそったりしないよ、草食性でおとなしいんだ」
「ふーん」
「発信機つけといたのに、ハズレちゃったみたいだな」
「どうすんのよ」
「とにかく捜さなきゃ、どっか草むらに入ったんじゃ」
「さがせ」

「アイツは」
「縛っときゃ動けないさ」
「オーイ、りょう、オマエも捜せ」
「何を」
「イグアナ、吉田の、逃げちゃったんだ 」
「イグアナ!?」
(アーもうサイアク… もうあの場所いけないよ)
「アレ、ヘェ、これが墨汁鉄砲か」
ピュッ
「けっこう飛ぶじゃん」
「オーイ、君たち何してるんだ」
「エイッ」
ピュッ
「アッ」
「ワッ」
よけた涼くんは無事だったけど、後ろにいたオマワリさんにモロにあたってしまった。
「ヴ…ヤバ」
「コラー!」
「ヒャーなんだ」
「どうしたの」
「君達いったいここで、何しとると聞いてるだろが」
「ちょーどよかった、オマワリさん呼びにいこうと思ってたんですよ」
「そ、悪者つかまえたの」
「悪者?」
「アーでもその前に一緒にさがしてくれませんか、イグアナ」
「イグアナ?」
「そう、ボクのペットで逃げちゃったんです、たぶんこの辺にいると思うんだけど」
「そ、そりゃ大変だ、はやくつかまえねば」
「イグアナって、さっきのワニみたいの?」
「ふうか、みたのか」
「う、うん たぶん」
「どこ」
「あのね、あっちの茂みのほう」
「それ!」
「マリリンでておいで」
「… …」
「いないねー」
「ギャー!」
「なんだ?」
「あっちだ!」
みんないっせいに、そっちにいくと… なんとアイツの上に乗っかってる!
「いた、つかまえろ!」
「ダメだよ、ビックリさせたら逃げちゃうかも」
「マリリン、いまいくよ」
吉田くんはそっと近寄って、みごとマリリンをつかまえた。
「アーよかった、どうなるかと思っちゃった」
「フーまいったまいった」
「マリリンえらいぞ、やっぱ最後はマリリンで決まりだね」
「ヤッタ、ヤッター」
「これは…」
「オマワリさん、そいつがね…」
そして、あたしの犯人は無事つかまえることが出来た。
「みんな、ありがとね」
「なんのなんの、ふうかのためなら、なんだって」
「なーに、カッコつけちゃって」
こうして事件はめでたく解決したのでありました。           (つづく)

犯人捕カク大作戦(1)  11.4

「いい?下校時間をちゃんと守って、絶対にひとりで帰らないこと。
わかった? 今プリント配りますからね、おうちの人にもちゃんと見せるのよ。
ではこれで朝のHRを終わります。1時間目の授業の用意をして待っててください。」
「ふうちゃん、いっしょに帰りたいけど、今日あたし塾なんだよね」
「あっ、いいよ、あたし今日・・・」
「よし ふうか!オレ、おまえのボディガードしてやるよ」
「ダメダメ!ふうかを守るのは水沢くんに決まってんじゃん」
(…)突然あたしの顔が発火した。
「ちょっとぉ!水沢くんはケガしてんのよ!」
「あーもう、みんなまってよ、今日からあたし、ウチから迎えにきてもらうの」
「おかあさんに?」
「うん、車だから安全だろうって」
「そっかー、よかったじゃん」
「でもいつまで?」
「しばらく・・・」
「しかしまたいつ、おそってくるか、わかんないしな、もうこないかもしれないし、1年後にまたってこともあるかも」
「お迎えやめらんないよね、大変・・・」
「それだったら一番てっとりばやい方法があるさ、捕まえちゃえばいいんだよ、犯人を」
「誰が?」
「オレたちがさ」
「そんな簡単にいくわけないじゃん!それこそ大変だよ」
「でも解決法はそれっきゃないよ」
「第一ホントに犯人があらわれるかどうか、わかんないし」
「いいか、発案者はオレだから絶対やりたいけど、でもひとりってのはオレもちょっと心細い、ってことで誰かオレといっしょに犯人をやっつけたいヤツいないか?」
「エー、でもねー」
「・・・」
「チョットおもしろそうだネ」
「ウン、なんかこう、ワクワクする!」
「よーしオレ、その話ノッタ!」
「マジ?」
「オレも!」
「ボクも」
「あたしも!」
「ワシも」
「拙者も」
「おいどんも」
あたしはこのやりとりを、あっけにとられて聞いていた。
(オイオイ…みんな楽しんでるけど、いったいそんなことできるのか…)
「たぶんこれは長期戦かもしれないから、とりあえず放課後つぶれてもいいヤツにする」
みんな部活とか塾とか、ほかにもいろいろな事情や、その場のフンイキにノッちゃった子をのぞいて、結局残ったのは5人の勇気あるヒマ人(?)たち? 
「ちょうどいいや、今日からオレたち、われらがふうかと雲見中のみんなと、街の平和を守る正義の味方、…エーと…グレートレンジャー!」
「オオ」
「キャーカッコワルー!」
「ヤメテヨ!」
「オンナがひとり多い」
「とにかくみんながんばろうぜ!」
「オオー!!」
そのとき、先生が入ってきた。
「キャハハ!」
「ヒューヒュー」
「がんばってネ!グレートレンジャー」
「応援してるからね!」
「?! コラコラ!静かに!授業始めるゾ」
私はうれしかった。
クラスのみんながこんなこと考えてくれるなんて、これならホントにあのニクいヤツをやっつけられるかも、そして、イッパツ、ブンなぐってやりたい…
「ふうちゃん、お昼食べたら作戦会議するから屋上にきて」
「うん」
えみちゃんはレンジャーのメンバーのひとりだ。
あたしはなんだかウキウキしてくる。
ホントはまたねらわれるかもしれない張本人なのに。
「ふうちゃんゴメンネ、ホントはあたしも参加したかったんだけど」
「んーそんなこと、ぜんぜんなんとも思ってないよ。それよりあたし今なんか楽しくて」
…屋上は風がとっても気持ちよかった。
「おまたせー」
「あっきたきた」
「こっちこっち」
あれ!? あそこにいるのは…
「涼くん、なんで?」
彼はケガ人がからって、今回はパスだったのに。
「とりあえずオレ、犯人のカオ知ってるから、特別参加ってとこかな」
「では諸君、さっそく今回の使命につ…」
「そんなのどうでもいいから、はやく考えようよ!」
「クスッ」
「ゴホン、じゃなんかいい方法がないか考えよう」
「石を投げつける、砂をぶっかける」
「吉田くん化学部なんだから実験室からなにか毒薬みたいなの盗んできてよ」
「エェーそれはちょっと…」
「オイ、相手をコロすなよ、ギャクにこっちが捕まっちまう」
「そりゃトーゼンでしょ」
「とにかくあたしたちはぜったい安全じゃないとね」
「うーん、どうしよー」
「あんまり大きいのとか重いものは持ち歩けないよ、犯人が確実に来るって決まってるわけじゃないし」
「なんかちっちゃいものをポケットにしのばせておくの、たとえばガビョウとか」
「うん、それいいかも」
「そんで相手がひるんだところを水鉄砲かなんかで攻撃!」
「まるでガキの遊びだね」
「ヤツは凶器を持ってる、油断できねェ」
「バットは?」
「うん、骨折くらいさせてもこの際いいよね」
「そうよ、こっちだってケガしてんだし、相手は悪人よ」
「じゃそのほか、各自、武器になりそうなものを考えて用意する」
「エー、なんかあるかな」
「けっこう見つかるかもよ」
「それで武器は持ったとして、どうやってやる?」
「やっぱ、ふうかのあとを尾行して、そいつがあらわれたら、イッキに襲う、かな」
「でもオレたちがいること、犯人にわかっちゃうんじゃ」
「うーん」
その時はじめて涼くんが、「あのさ、こっちからいくと横断歩道の前に公園があるじゃない、オレ、意外にそこ、あやしいと思う。もう暗くなってくるから誰もいないし、そいつがそこで待ち伏せしてるかもしれない…」
「ヘェー するどいネ」
「ひとつの可能性さ、そーじゃないかもしれないしネ」
「よしッ、いいか、作戦はこうだ、ふうかの尾行に2人、公園の入り口が見えるところに2人、公園の塀の外に2人、それぞれ待機、それならどっちにしろ何とかなるだろ、見つけたらイッキに攻撃!でどうだ?」
「いいんじゃん」
「そんなもんかな」
「うん、もうそれでいいよ」
「きっとうまくいくよ」
「OK!実行は明日から、では解散!」
「ヤベ、もう授業始まってるよ!」
「ヤダ!マズイヨ」
あたしたちは午後のはじまりのチャイムを知らずにいたらしい。
先生に注意されたのは仕方ないか。        (つづく)

秋の1日   11.2

あれから大変だった。
病院から戻ってから、おとうさんと、連絡してかけつけた涼くんのおかあさんと、涼くんとあたしで交番へ行き、被害届を出してきた。
その間におかあさんが、担任のサエコ先生にも連絡してた。
おフロに入ったときにはドッと疲れが出てきた。
もう明日のことなんてどうでもいい、ずっとベットにいれたらどんなにいいか、このまま明日にならなきゃいいのに、それでもやっぱり朝はくるんだよね、これが…
学校行ったら、きのうの事件のこと、もうみんなに知れわたっていた。
「ふうちゃん、ダイジョブだった?」
「コワかった?」
「水沢くん、かわいそう…」
緊急集会があって、校長先生が、じゅうぶん注意するようにっていってた。
けど文化祭は、予定どうり進められた。
(あたし、セリフおぼえてるんだろか…)
けれど衣装とかつけてみると(演劇部の人たちに借りた)ケッコウそれらしくなれたりして…
「ふうちゃんキレイ!」
(ヤダー それほどでも…)
あたしはお姫さまっぽく(?)ほほえんでみせた。
涼くん、なんていうかな… そういえばぜんぜん見かけないよ どこいっちゃったんだろ ちなみに彼はこの劇に関しては、道具係りとかで、裏方さんに徹してる。
バンドのほうの練習かな とうとうあたしたちの出番になった。
(おちつけ おちつけ…そう、見てるヒトはみんなジャガイモよ)
てのひらに「人」って書いて飲み込んだ。
「ふうちゃんセリフ忘れたら紙に書いて見せるから」
(ハァ…)
ポンッ!肩をたたかれて、ふりかえると「涼くん!」
「ガンバッて!」
「ウン…」
(あぁあの笑顔がいいんだよなぁ)
「ふうちゃんGO!」
(よーし、このいきおいでやったるか!)
結果は… 2度ほど紙のおせわになったけど、まぁあたしとしては上出来、上出来!
「みんなおつかれ!」
「ハイハイおつかれ」
きゅうにお腹すいてきた。
「ね、あたしお腹すいちゃった」
「あたしも、もうすぐお昼だよ」
「模擬店になんかあったっけ」
「ウーンたしかヤキソバとか」
「ソレでいい、食べ行こ」
「ん、でもサ、お昼おベントでるよ」
「でもまだでしょ、あたし待てない」
「もう…」
「ネェ、涼くんのいつやるのかな」
「…たぶん2時頃からかな」
「じゃぜったい忘れないようにしなきゃ」
「うん、そうだね」
「アーンまだお腹へってる」
「ふうちゃんフトるよ、フトると涼くんに嫌われちゃうゾ」
「う…」
「なっちゃん」
「ん」
「アイス食べたい」
「ハァーヤレヤレ」

 
1時半に体育館に行ってみるともう、けっこうヒトでイスが埋まり始めてた。
なっちゃんと、えみちゃんと、まいちゃんとあたしで、まえから6番目の席をとることができて、とりあえずホッとひと安心。
「なんだかワクワクするね」
「ウンウン、どんなのかな」
「どんなんだかぜんぜん知らないね」
「ネ!ヴィジュアル系って誰かいってたよ」
「ウソォ!じゃメイクとかスゴかったりして?」
「ありかもね」
(ウソ、まさかね、ほかはどうでもいいけど、涼くんだけはヤダ。イヤまてよ、でも彼って美少年っぽいし、いがいに… アーでもやっぱり、ヤ!)
「…でね、彼すごくカッコイイの」
「誰が?」
「だからぁ、ふうちゃん聞いてる?3年の秋本先輩!」
「ハァ」
「ふうちゃん知らないの? ブラバンの部長、女子にけっこうファン多いんだよ」
「んーそういえば何となく聞いたことあるような…」
「ダメダメ、この子の頭の中はいま、水沢くんだけだヨ」
「ヤーもう、ちがうよー」
「ダーメ、もうミエミエ!」
「なんせキミを守るためケガしてまで、助けてくれたんだもんねー」
「ステキよねー、カッコイイ!あたしが変わりたかったわー」
「もう!」
「あっホラ、もうすぐ始まるよ」
暗くなった体育館、幕が上がり、響きわたるギターの音。
(イエスタディだ…)
照明のあたった先は…ヴォーカルはあの秋本先輩(ホントだ、背高いし、あまいマスクで、ウン、声もなんかステキだし、こりゃ女の子にもてるだろうな…)それとあの人も、あ、あのドラムの人も見たことある。
名前は知らない。
でもおなじ2年だったような… 「なんだ、みんなあんまり変わってないじゃん」
「なんかガッカリしてない?」
(涼くんやっぱりギターだったんだ、私服姿、始めて見た…)
曲が終わり、体育館中にひびく拍手と歓声。秋本さんの挨拶のあと、大好きだというビートルズのナンバーがいくつか続く。
(ワー じょうず!)途中、秋本さんが作詞、作曲したという曲があって(これもけっこうイケる)最後は、グレイとかラルクとかの曲があって、会場ノリノリ!
あっというまの40分だった。
(うーん、こりゃとても中学生とは思えないほどだわ…)
「ありがとう!この後は10分の休憩のあと、わがブラスバンド部の演奏会もありますので、そっちのほうもよろしくお願いします」
「よかったねー」
「みんなじょうずだねー」
「いっぱい練習したんだろうね」
「ふうちゃん、水沢くんやるねー!」
「うん、だね」
(ウン、ホントに。腕のホウタイがちょっとイタイタしいけど、やっぱ涼くん、ちょーカッコイイ!)
「演奏会は見ないよね」
「うん。ワルイけどね」
あたしたちは体育館を出た。
「今年の文化祭よかったね」
「うん!」
「楽しかった」
「よね」
風がどこからか、キンモクセイの甘い香りを運んできた。
あたしはギターをひく涼くんのゆれる髪、
やさしそうな横顔を思い出していた。
(つづく)

ストーカー事件    11.1

文化祭を翌日にひかえたその日、1日中準備でその後、最後の練習。
「じゃこれで終わります。明日は本番なので、みんなセリフ忘れないように!」
(あー疲れた もう早く帰って思いっきり眠りたい) 途中までは一緒だった、なっちゃんとえみちゃんに別れ、ひとりになった。
これはいつものことだから、どうってことないんだけど、今日は違ってた。
あたしは歩いてて、誰かの足音に気づいた。
なにか変。
あたしが歩調をゆるめると、相手も遅くなる。
速くするとむこうも速くなる。
(ヤダ はやく帰んなきゃ)ひっしに走った。
そしたら何かにつまづいて、その場にひざまづいてしまった。
そのときはじめて振り返ったら、むこうから男が話しかけてきた。
「ねぇ待ってよ、そんなに逃げなくてもいいじゃない。きみ、名前なんていうの?きみの友達がフウちゃんて呼んでたね」
「…」 「ねぇきみのことずっと見てたんだ、今度つきあってよ、一度でいいからさ」
だんだん近づいてくる。
(はやく逃げなきゃ)そう思うのに足がすくんで動かない。
「イヤ!」
そいつの手があたしの服にふれようとしたとき、急にドカッって大きな音がして、そいつが倒れこんできた。
(え なに カバン?)
その時、だれかの声がきこえた。
「逃げろ はやく!」
「涼くん!」
みるとそいつを、しっかりつかまえてくれている。
「なんだよこいつ、はなせよ、チクショー!」
(クソー なんだよコイツ ジャマしやがって、もう少しだったのに)
「それは残念だったな、でも、あんたにはわたさない」
(なんだこいつ?)
そしてそいつは、涼くんの腕をムリヤリふりほどいて、一目散に逃げていった。
「オイ 待てよ!」
涼くんが後を追いかけようと立ち上がったとき、彼の腕から血が出てるのに気づいた。
「涼くん、血!」
「えっ、あっ…」
「イヤ こんなにどうしよう…」
「あいつナイフ持ってたから」
「どうしよう、お医者いかなきゃ!」
ハンカチでおさえたけど赤くそまるだけ。
「キャー 傷口あいてる!病院いかなきゃ でもこんなんじゃ歩いてなんて行けないし…そうだ!おかあさんにクルマ乗っけてってもらおう、あたしんち、このすぐ近くなんだ!」
「いいよ、帰ってから自分で行くから」
「だって涼くんちどこ?そんなかっこで歩いてったら、みんなにあやしまれるよ。サッ はやく」
「わるいよ…」
「なにがよ」
とにかくあたしは彼を家につれていった。
「おかあさん!病院行きたいの」
「あっ、ふうちゃん遅かったじゃない。え、なに?病院がどうしたって?」
「あっ!どうしたのよいったい!」
「おかあさん、はやく病院!クルマだして」
「う、うんクルマね…ちょっとまって」
「どうしたの?」
うしろからイクトが顔をだしてビックリしてる。
「にゃん太、ダメ!こっちきちゃ」
「イクト、タオルもってきて!」
「ふうちゃんいいよ」
「サッ、乗って」
「スイマセン…」
病院の待合室で涼くんを待ってるあいだ、あたしはおかあさんに、今日のことを話していた。
「被害届ださないとね」
「うん、そうだよね」
(あーどうしよう、なんでこんなことになっちゃったんだろ… 明日は文化祭だってのに)
「カレ、だいじょうぶかしらね」
「あっ」
「りょ…水沢くん、だいじょうぶ?」
「うん…あ、あの今日はどうもスミマセンでした」
「あら、いいえそんな、こっちこそ、ふうかをたすけてくれてありがとうございました。もしその時、あなたがいなかったらと思うと」
「いえ、そんな…」
「あ、ちょっと待っててね」
「ねぇ、そこ、ぬった?」
「6針、だったかな」
(ゴク…)「イタそう…水沢くんゴメンネ、ホントにゴメンナサイ」
「キミがあやまることないよ」
「だって、あの時あたしにあわなかったら…」
「ふうか、もうオレのことは気にするな。そんなことより、もっと自分の心配しろ!まだあいつ、そのへんにウロウロしてるかもしれないんだゾ」
「!うん…」
(いま、よびすてにした、あたしのこと キャーウソォ!たしかにあたしったら、まだじゅうぶんアブナイ状況なのに、こんなこと考えるなんて…)
「ふうちゃん、トロイからなぁ」
「ムッ、じゃこれからは、あたしがアブナくないようにずーっと、あたしのこと守ってネ」
(キャハッ またあたしったらドサクサにまぎれてなんて大胆な)
「ジョーダンでしょ、そんなことしたらオレ、ホントに命が100コあってもたりないよ ハハ」
「あ、おまたせ さぁ帰りましょ」
なんかいうつもりが、おかあさんの言葉で忘れちゃった。
だけど高かったカベを、やっとひとつ越えられたような… 
うん、たしかにそんな感じ!
こんなときなのに、それがすごく嬉しかった!
つづく 

 

文化祭  (第3話)

2学期はどうということもなく過ぎていった。
ちなみに、あたしと水沢君との間も当然のことながら、なんの進展もない。
(っていうかむしろ後退してる?)やっぱあたしの一方的な片思いで終わってしまうのか。
まぁ それはさておき、文化祭の出し物が決まった。
今年は、歴史の授業に関することがらを劇にすることになった。
「では、うちのクラスは劇に決めます。いいですか?」
(なんで劇なんか そんなの演劇部にまかせときゃいいのに かったるい)
なんて思ってはみたけれど、まっ、どうでもいっか。
「で、何をやるかですけど、歴史にもとづくもので、何かいい案のある人いますか?」
「はい!シンデレラ!」
「はい?あのそれは歴史とはちょっと…」
「じゃ白雪姫!」
「それじゃディズニーだョ」
「タイタニック!」
「アキ、オマェ ラブシーン期待してネェ?」
「キャハ バレタか」
「マジメにいきます!男子はどうですか?」
「関が原の戦い!」
「織田信長」
「キリシタン弾圧とか」
「ヤダー」
「なにそれ、そんなのムズカシすぎー!」
「ぜんぜんわかんなーい!」(ギャーギャーさわがしい)
「静かにしてください!鏡さんはどうですか?何かないですか?」
「ハイ?あたし? あっ えーとぅ …かぐや姫」
「それって、よくやるんじゃない?」
「…それもあんまり歴史っぽくないんじゃ」
「いいんじゃん!古文の授業ってことにしちゃえば」
「オゥ そうだ そうだ それでいいって もう、めんどうじゃん」
「うんうん」
「そうそう」
「それでいい!」
「ではいいんですね?今回は歴史をやめ、古文の授業から、かぐや姫っていうか、竹取物語ということにします。」(ほよー いいのかな、あたしのに決まっちゃった…)
「では次に配役を決めたいと思います」
「まず、かぐや姫に立候補したい人いますか?」
「ハイ!鏡さんがいいと思います」
「ハイあたしも、ふうかがいい」
「異議なし!」(ムフフ、やっぱこれってあたしよね、ってそれヤバイ!)
「ちょっと!あたしお芝居なんて出来ないよ!」
「だいじょうぶだって!みんなやったことないもん!」
「そうそう軽い気でやればいいのさ」
「じゃ、きみがやりなよ」
「では鏡さん、お願いします」
「そんな…」(どうしよう…)チラッと、おとなりをみる。
水沢君はとなりの子と何か話してる。

 

彼とはあんまり口きいてない。
(あぁこんなにそばにいるのに、なんて遠い人なの)大体あの体育祭がいけない。
もう思い出すのもハラだたしい。
まったく最悪な日だった。
走るのチョーニガ手の私が、なんのまちがいかリレーに出されて、あともうちょっとのところで、みごとにコケて、みんなのあわれをさそった。
おマケに綱引きのロープが足につまずいて、ちょうど後ろにいた水沢君にぶつかったひょうしに、彼の背中に思いきり、しりもちをついてしまった。
一瞬わけがわからず、急にハッとして「ゴメン、ゴメンネ!大丈夫?」
「い、いいよ平気だって」
「ホントに大丈夫?」
「うん、ホントに」
そして最後の決定打。
その日の帰り道で同じクラスのあいちゃんが「ねぇ ふうちゃん、ふうちゃんにちょっと聞きたいんだけど」
「なに?」
「水沢君って、あなたの彼?」
「えっ?のハズないじゃない、なにそれ」
「ちがうの、じゃあ、あたしが彼にアタックしてもいいわけよね」
「?!」
「よかった!いちおう、ふうちゃんに確かめないと、と思って、じゃね」
(オイちょっと、なんだよソレ、いいもなにも始めから、あたしたち何でもないって 何かうわさでも、されてたんだろか…)
もう、ふうかのバカ!どうして心にもないことを。
でもあたしには、どうすることもできない。あれから彼女どうしたのか知らないけど、あたしの心はなんとなくモヤモヤして… 「では明日の放課後、打ち合わせ、それから練習に入りますので、みんな文化祭まで協力お願いします」いつのまにか、みんな終わってた。
「ふうちゃん、帰ろう」
「うん」
「すごいねふうちゃん、ヒロインだよ!」
「うん…テヘヘ、でも出来るか心配だよ、ホラ、あたしってすごいアガリ症じゃん」
「ううん大丈夫だよ、ぜったいできるって!」
「……」
「ねぇ それよかふうちゃん、最近元気ないよ、なんか悩みでもあるの?」
「べつに」
「水沢君とケンカでもしたの?」
「なにそれ、ぜんぜんマトハズレ、大体、彼とはなんにも…」
「そうそう、そういえば水沢君、今度の文化祭でバンドやるんだって?」
「えっ?!」
「知らなかったの?なんでもね、ブラバンのメンバーでバンド作って、その中にとびいりでやるんだって!」
(水沢君が…ギターやるのかな、それともヴォーカルだったりして 音楽好きだったんだ…)       
つづく

帰り道で

(うーん、ちょっといいじゃんこの子)
(せっかくトナリどうしになったんだもん、チャンスだわ。なにか話かけたいな・・・)
(ネェ、キミどこからきたの?って、ソレたしかさっき、先生いってたような・・・)
(でもなぁ、キッカケがなぁ、タイミングがなぁ・・・キミ、名前は?ってソレもさっき
いってたよなぁ・・・あーいいコトバがうかばない・・・)
「あッ、ねぇ、君、ねェ」「えッあッハイ?」(そっちから声かけてくれるなんて)
「あの、君、よばれてるみたいだよ」「ハ?エッ」まえを見ると先生と目があった。
こっちみてる。「鏡さん聞いてる?みんなの宿題、集めてきて。もうあなたの列だけよ。」
(ガーン、宿題!?ナニソレ)「ホラ夏休みのプリント、もしかしてふうちゃん忘れた?」
「えッあッそれか、ううん、ちゃんと持ってきたよ」「ハーイ、スイマセーン、今集めまーす」
(ヤーダ、あたしってばセンセの話なんにも聞いてなかった。あーハズカシー。はじめっから
こんなんじゃ、あたしの印象さがっちゃうじゃない)チラッと彼の方をみると、
ぜんぜん無視?
「では今日はこれで終わります。明日からはちゃんと授業ですからね」
「きりーつ、れい!」「ファーおわった、おわった」さてと、あ、あれ・・・
「ねェねェ 君 部活なに入る?」「オレ、中西健太、よろしく!」
「ねェ水沢くん、家どのへん?よかったら一緒に帰りません?」
「オレ、科学部の部長やってんだけど、実験は楽しいョ!」(オイオイ、なんなんだ、コイツら)
「将棋部なんだけど、今、部員少なくて困ってるんだ」(フンだ、彼はぜったい運動部よ)
「ぜひ、遺跡発掘部へ!」
(イセキハックツ部?なんじゃそりゃ、そもそもそんな部あったなんて初耳だっつーの。まったくうるさいなぁコイツら)
「ふうちゃん帰ろう」
「うん」(まっいいか、これからチャンスはいくらでもあるさ)
・・・・・・・・・・・・・・・
「あれ、まえにいるの水沢くんだ」「あ、ほんと」(なんだ、あの子達といっしょか、いいなぁ、あたしもあんなに気軽に話せたらなぁ)
それぞれ別れて、そのうち彼はひとりになった。
「ふうちゃん、じゃまたね!」「あ、うん、じゃね」「ねェねェふうちゃん、チャンスだね!」
「・・・」「じゃ!」(そっかあたしもひとりか。これって、ふたりっきりってこと)
(どうしよう、やっぱ話しかけられないよ。でもこのままじゃまるで、あとつけてるみたいじゃない。そんなの不自然じゃん。よーし、思いきって・・・)
「あッあの」ちょっと間をおいて彼がふり返った。
「やぁたしかキミ、となりの席のエーと・・・」「かがみ、かがみふうかです・・・」
「ふうかって、どんな字書くの?」「風の香り、ミラーの鏡で鏡風香」
「へェ、いい名前だね」「そぉ・・・?」でも、それっきり沈黙、
(なにか話さなきゃ・・・)でも何もうかばない。なんか気まずいよなぁ。
何げなくまえの横断歩道をみると小さな犬が走ってく、その横からトラックが、
「あッ!」犬を追いかけて、とび出そうとした子を水沢君がだきとめた。
間一髪だった。「バカヤロー!」運転手からはどなられたけど、よかった。
女の子も水沢君も犬も無事だった。
その犬は向こうへ渡って、とまどったようにこっちをみてる。
(ポッケ、ゴメンネ、さっきチョコわけてあげなかったから、ポッケいっちゃダメよ)
やっと信号が青にかわり、あたしたちも向こうへ渡った。
「ポッケ、さっきはゴメンネ。だからにげないで」
犬はこっちを気にしているのにまた向こうへ行くそぶりをみせたりしている。
「おいで、さぁ、おいで、いい子だね」
ちょっとずつ近づいたところであたしはやっとつかまえることができた。
「そう、よしよし、いい子だね」あたしは女の子に犬をだかせてあげた。
「かわいいワンちゃんね、ポッケっていうの?そう、もうはなしちゃダメだよ」
「うん。ありがとう」「それとポッケは、チョコあげなかったからにげたわけじゃないと思うよ。
きっとまだ小っちゃいから、外をいっぱいとびまわりたいんじゃないかな?」
「・・・?水沢君、なに、チョコって?」「おにいちゃん、なんでしってんの?」
「ちょっと、そうかなーって思っただけさ」「あッ!ママだ、ママー!」
「ありがとう!おにいちゃん、おねえちゃん!」「バイバイ!」「バイバイ!」
「・・・ねェ、水沢君?」
「あッオレこっちだから。じゃまた明日!」
「えッあぁさよなら・・・」
(なんだ、なんかへんな展開になっちゃったな・・・。でもまた明日だって。カレ、笑顔もカワイイッなんてね、エヘ、あれ、でもなんかさっき、変なことがあったような・・・いったい何が気になってんだろ、あたし・・・)

つづく

 
1999.9月1日

水沢涼(みずさわりょう)
まだジョーダン抜きに暑いのに、もう学校が始まってしまった。(ウ〜眠い)
「アーがっこ行きたくなーい、にゃん太かわりにいってきてー」「わん!」
「ホント!行ってくれる!?イヤーにゃん太はいいこだね〜」
あたしは、にゃん太の首輪にかばんをかけてあげた。
「でも、なんか首が折れそうだね〜」
にゃん太はかばんを取ろうと、しきりにもがいている。
「アホだぁ、ふぅ」イクトがバカにした目であたしを見る。
「なーにバカな事してんの!にゃん太がかわいそうでしょ!2人とも早くしないと遅刻だぞ」
「チェー」

おかあさんから追い出されて仕方なく家を出る、あたしなのでありました。
さあて、本題はこれから。
その、始業式の日、あたしたちのクラスに転校生が来た。
「今日からみんなの仲間の水沢涼君です。みんな仲良くしてあげてね。」
「水沢涼です。よろしくお願いします」
(ふーん)
「エーっと、そうネ、席は鏡さんのとなりネ。」
「ヘっ、あ、ハ、ハイ」
(ふーんりょう君かぁ)
思わずちょっとワクワクしてしまう。ふうかなのでありました。
(つづく)
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